Q.いつもブログ読んでます。
ずっとお聞きしたかったのですが、ヒロさんて、一番好きな画材は何ですか?
いろんなタイプの絵があるけど、きっと、これが一番!ていうのありますよね?
A.ご質問ありがとうございます!
一番ってむずかしいですね(笑)
あえて「一番」を選ぶなら…やっぱり、焼き絵かなあ。
好きっていうだけじゃなく、自分と相性がすごく良いからなおさらですね。
Q.焼き絵って、ヒロさんのブログで初めて知ったんですが、どういうもの?
A.ウッドバーニングとも呼ばれてて、電熱ペンで木を焦がして描いていく技法です。
海外では、「Pyrography(パイログラフィ)」という名称も使われてます。
私はカタカナより漢字の言葉が好きなので、「焼き絵」を使ってます。
いつもブログを読んでくださってる方とのお話の中で登場した会話を冒頭にあげました。
この「一番好きな画材は何?」は、時々いただく質問です。
そのたびに考えて、でも答えに出すことが一番多いのが、焼き絵。
残念ながら、あまり知られてないようで、ギャラリーに持っていっても「初めて見た」と、よく言われます。
せっかくなので、焼き絵のご紹介をしつつ、「相性がよいものを選ぶとどんないいことがあるか」を書いてみます。
これが、焼き絵の道具「電熱ペン」です。
私の使っているものは、温度が十段階に変えられるもので、使えるペン先が多いのが特徴です。
電熱ペンというのは耳慣れなくても、ハンダゴテなら知ってる…という方も多いんじゃないでしょうか。
仕組みは同じで、ペン先が0.5ミリ、1ミリと細く、細密に焦げを作ることができます。
他には平ペン、刀のようなカタチのペンなどもあり、レザークラフトや彫金にも使える便利な機械なんですよ。
私が使っているペン先は、この3種類。
もう一種類、広い面を濃く焦がすのに便利という円柱型のペン先を買おうかなと考え中。
一色で描く技法としては水墨画やペン画、鉛筆画などありますが、この焼き絵は、塗料ではなく焼いた焦げ跡で絵をつくっていくもので、独特の風合いがあります。
私が愛用しているのは、1ミリの丸ペン。
0.5ミリも持ってはいますが、1ミリのペンでも動かす速度や筆圧を加減することで細く描くことはできるので、1ミリしか使っていません。
こちらが、1ミリ丸ペンの筆跡。
全て同じペン先で描いた線です。
ペン先を早く動かすと細く、ゆっくり動かすと太くなります。
ただし、同じ場所にじっと押し当てていると、そこがどんどん焦げていきますので、跡が広がって深くなり、うっかりすると板に穴が空いてしまいますので要注意。
こちらは、斜めの刃のようなペン先で作るグラデーション。
濃いところはゆっくり強く、薄いところは軽く撫でるような感じで焦がします。
濃いところは、何度か重ねて焦がしていくのですが、木の油分が出てきて焼けなくなってくるので、状態によっては冷めるまで数時間以上放置しておきます。
こちらの焼き跡がわかりやすいかと思いますが、平ペンで濃く焼いたところは板の表面がへこむんですね。
こういうところも、焼き絵ならではの風合いを醸し出す特徴ですね。
素材につかう木の種類によっても、風合いに違いが出ます。
焼き絵の素材に向いているのは、杉やシナ、朴などの柔らかく目の細かいもの。
ヒノキはかなりクセがあり、焼けにくいので、特に木目の上などは手こずります。
こちらはシナで、工作用の素材として売っているものを使いました。
木目がほとんど目立たなくて、なめらかです。
こちらは、ヒノキ。
見た目にも年輪の線がくっきりはっきりしています。
この線の上が、全然、焦げ跡がつかなくて苦労するのですが、ヒノキは香りがとてもいいんですよねえ。
私は、素材のクセはクセで活かせばいいと考えているので、ヒノキは向かないから使わない…といったことはありません。
それに、平面ではないものも使います。
たとえば、こちらはギターに焼き入れしたもの。
こちらは、木軸ペンです。
木刀に入れたものは写真ではよくわからないので、動画にしてあります。
この技法を知った時は、すぐに機械を買いました。
そして、ロクに試しもしないで、いきなり、そこそこ大作を描きました。
描きながらクセを掴んでいったのですが、特に困ることも迷うこともなく、サクサク完成しました。
相性がいいって、こういうことか!と思いましたね。
その作品は、こちらでどうぞ。
焼き絵は「板の表面を焦がしてしまう」ので、失敗を修正するのは困難です。
でもね。
テレビドラマの台詞じゃないですが、「私、失敗しないんで!」なんです(笑)
少々のことは起きるとしても、消すということなく描き変えてつじつまを合わせるような力業は、得意です。
ですから、何も問題ありません。
時間のかかる技法ではありますが、私はこれが一番好きと言ってもいいかな、と。
墨や鉛筆など、基本、モノクロの絵が好きですね。
自分と相性の良いものを使う、っていうのは、すごく大事です。
好きなモノ気に入ってるモノを使うと、気分がアガる…って、言いませんか?
好きだと、それだけでやる気も持続力も出やすいです。
それに加えて「自分と相性が良い」が上乗せされると、
- 上達が早い
- いつの間にか上手くなってる…というくらいに、労力が少なくすむ
- 特性を把握するのも早いため、応用を利かせやすい&発想を広げやすい
といったメリットがあります。
好きなモノや好きなコトは、多くの場合「自分と相性が良い」から好きになるとも言えます。
ただ、「ヘタの横好き」というのも、往々にしてあるもので。
もちろん、私にもたくさんあります。
そういうものは、好きだからやりたい気持ちはとてもあるのに、なかなか、上達しないんですよね。
その点、相性の良いモノというのは、はじめから初心者レベルよりちょっと上だったりします。
自分ではそのつもりはないのに、ふと周りを見回してみたら
「あれ? なんだかわたし、ちょっと他の人より上手い?」
と気がつくようなことがあったら。
自分と相性の良いものを見つけたのかも知れませんよ。
焼き絵の龍画も、5月の「龍の箱庭展」に展示します。
[kagurazaka]
こちら、電熱ペンのメーカーサイトです。