じっくり選んだ一品とつきあってみると、ていねいに作られた品の良さがよりわかってきて、それは感性を育てることにつながる

陶芸/クレイアート/立体作品

陶芸家の方がYouTubeでさまざまなテクニックや考え方について教えてくださっているのを、ありがたーーーーく、拝見している。

以前、
「うまく作れるようになりたいなら、まず気に入った作家の作品を一つ買って、使って、じっくりとことん観察することです」
と語られているのを拝見していた。

気に入ったモノを買いたいな、と思っていた。

   

越前工房の目の前には、越前焼の施設がならんでいる。
その一つに、作家さんのカップを実際に使ってみることができるカフェスペースがある。

たった200円で、好きな飲み物を選んだカップに注いで、いただくことができる。
使い終えたら、所定のカゴに戻しておけばよい。
気に入ったら購入できる。

実際に触れてもらって、よさを直接知ってもらいたい…という、とても心温まる素晴らしい試みだ。

私も、越前に来るようになってから何度か、いいな、と思ったカップを試させていただいた。
見た目でいいなと思っても、実際に使ってみた時の感じは少し違う…というのが何度かあった。
そうなのだ、量産型ではない器は、意外と、見た目気に入っても使い心地がなんだか違う…ということが、あるのだ。
量産品は最大公約数で作られているから。
どれを選んでも大差ないかわりに、大きく外すことも少ない。
作家モノは量産品よりもぐんと値があがるけど、実際使うと合わないことも多くて、手が出しにくい要因の一つにもなっている。

ここでは、それも解消できる。
使ってみる以上に、その器を知るためのよい手段はない。

   

先日、ついに、見た目も好きで試しに使っても感じが良いものがあったので、買ってみた。
工房に持ち帰って以来、何を飲む時もそのカップを使っている。

  

土の色が好き。
釉薬の色が好き。
フォルムが好き。
見た目より軽くて持ちやすい。
安定感がある。
口が広くて注ぐのも洗うのも楽。
二種類の釉薬の質感が違ってて変化がある。
筆の線のにじんだ感じが味があって好き。
私は手が小さいのだけど、持ち手の具合が実に絶妙。
(そう、この前、これいいな~と思ったモノがあったけど、使ってみたら持ち手のカーブと私の指が合わなくてすごく使いにくかった…見た目だけじゃないと実感した)
てのひらで包んだ時のフィット感も好き。

   

量産品の安いカップは雑に扱ってもあんまり気にならない。
でも、こういう風にして気に入ったモノは、やっぱり、扱いも違う。

  

こうしたことは、「感覚を育てる」ことだと思う。
実際の手技は作って鍛えるしかないけれど。
それを支えるのは、こうしたいという欲求とか、こういうものに近づけたいという理想だったりする。
目指すところが明確かどうか、というのは、技術の習得には大事な要素だ。

  

こういう風に使ってほしい。
こういうシーンで使ってほしい。
こういう人に使ってほしい。

そんな作り手の思いというものも、結局は「自分が好きなモノ」がどういうものかを把握していないと、どんな人に届けたらいいのかも、イメージしにくい。

だから、「気に入った品を買って、使って、よく見る」ことが上達につながるのだ。

…と、今更ながら思ったわけ。

   

   

   

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